今回はテクニカル・ヴィヴラートの使い方。これは結構無意識にやってる人が多いにもかかわらず、どこの本にも書いてない事ですね。
まず、ヴィヴラートを掛けると効果的な場所というのがあります。それは簡単に言うと、長い音。テンポにもよりますが、大体ヴィヴラートを掛けるのは2分音符以上の長さの音でしょう。あまり短い音に対してヴィヴラートを無理に掛けると、ノコギリヴァイオリンみたいな演奏になってしまって気持ち悪いです。だからある程度の音価(音の長さ)がある音に対して掛けます。これは、クラシック・ジャズ・ポピュラー関係なくそうだと思います。
そして今一度おさらいですが、テクニカル・ヴィヴラートでコントロール可能な事は
1.ヴィヴラートの掛け始めと掛け終わりが自由に決められる
2.ヴィヴラートの幅(ピッチの振れ幅)が自由に変えられる
3.ヴィヴラートの間隔(パルス)が自由に変えられる
の3つです。これを組み合わせて、色々な表現をするわけです。
「色々な表現」と言いましたが、ヴィヴラートは本来の「メロディーの感情表現」「音そのものの美しさの表現」(これはナチュラル・ヴィヴラートの方が主ですが)の他に、特にジャズでは「時代」を表現する事が出来ます。
ジャズは音楽の歴史の中では、非常に短期間に進化した音楽なので、そのスタイルの進化とともにヴィヴラートの表現も移り変わっていきました。つまり、その時代の特徴的なヴィヴラートの掛け方を覚えれば、簡単に「その時代っぽさ」が出せるわけです。
ここで、割と簡単に「3つの時代」が吹き分けられる方法を紹介しましょう。
まず、ジャズをヴィヴラートの特徴で大雑把に時代別に分けると、
1.ディキシー~スウィング時代(1900~40年ごろまで)
・代表的なミュージシャン
ルイ・アームストロング(tp)、ベニー・グッドマン(cl)、デューク・エリントン(p)、
カウント・ベイシー(p)、グレン・ミラー(tb)など
2.ビ・バップ時代(1940年代)
・代表的なミュージシャン
チャーリー・パーカー(as)、デイジー・ガレスピー(tp)、ウディー・ハーマン(cl)、
セロニアス・モンク(p)、クリフォード・ブラウン(tp)など
3.クール~フュージョン時代(1950~60年代以降)
・代表的なミュージシャン
マイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、
チック・コリア(p)、ハービー・ハンコック(p)など
の3つに分けられます。(1970年代以降は、流行り廃りはあれど、これらのものが混ざり合っていくので省きます)
これらの時代に特徴的なヴィヴラートは、次のような感じ。
1.ディキシー~スウィング時代
⇒音の始まりから、大きな振れ幅のヴィヴラートを掛けます。いわゆる
「ちりめんヴィヴラート」というやつ。ダンス・ミュージックやラジオ全盛の頃、
聴きばえのする派手なヴィヴラートが好まれたものと思います。
この振れ幅の大きいヴィヴラートは、また後に書く「リップ・ベンド」が身に付いて
いた方が掛けやすいので、その時にもう一度触れます。
2.ビ・バップ時代
⇒やはり音の始まりから掛けますが、やや振れ幅が小さくなります。
表現がフレーズ中心になり、伸ばしの音で主張する必要がそれほど無くなった為でしょうか。
3.クール~フュージョン時代
⇒マイルス・デイビス(tp)が「クールの誕生」というアルバムを発表し、技巧中心だったそれまでのビ・バップ(ホット)に対して抑えた表現のジャズ(クール)を創造しました。
その時から現在まで、モダン・ジャズの主流となっているヴィヴラートの掛け方。
ほぼストレートトーンで吹き伸ばし、音の最後に少しヴィヴラートを掛けます。
これらの特徴は、吹き伸ばしの多いバラードでその違いが顕著に出ます。なので、興味のある方はそれぞれの時代の代表的なミュージシャン(あるいはビッグバンド)の、バラードの演奏を聴き比べてみてください。ただし、同じバンドでも長く活動したバンド(例えばカウント・ベイシーなど)は、初期と晩期で全然演奏が違うので、注意してください。
ビッグバンドの人は、この3種類を吹き分けられるだけでもかなり「その時代っぽさ」が出せます。
色々聴いて、自分なりに研究してみてください。
では次回はヴィヴラート編最終回、さらにディープなテクニカル・ヴィヴラートの研究を。
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